嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

Sugar High / 鬼束ちひろ (2002)

光を閉じて、お願い
闇に閉ざされた空間は
ただ無機質に私の鼓動が響き渡るだけ
抱き枕の反発は私の夢さえも拒んで
何も起こりはしない夜をただ続けていく
不自由のないないこの身体を横たえても
訪れるのは静寂ではなく
まだ留まることを知らない私の心臓
紙に吸い込まれるインク
私を抱えてくれるのは何?
彩度を失ったモノクロの中に
意地悪をする色のパレット
煌びやかに光を弾く鏡の前で踊る独り遊び
どうか醜い私の身体を殺して
ただ一つの恋心までもが色を前にして褪せていく
思うのは闇、私を暴かないで
紫煙の中で全てを誤魔化そうとする人の悲しい色は窓の前に映ってしまう
ワンコイン、金貨の叫び声を誰か私の中に閉じ込めて、こらえきれない
光を呼ばないで、私の名前を閉じて、闇に聞こえる音を消して
いつまでも終わらない夜の中で怯える日々に甘えて
求めるべきは声、ただ誰かの救いの声をどこかに乗せて
私はあなたを助けることは出来ない
一つこの闇がある限り
どこからかの光で私を抱え出して
終わる前に、閉じる前に、朽ちる前に