嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

love to sleep / dip (1995)

フィルムに起こしたビデオムービー
切り刻んだ紙吹雪のコラージュ
闇で回したネガを
反転させた光で見せつける悪意
水の上に渡した油、密陀僧を少々
スイトピーのグラデーションを器用に摘んで
ボウルに散らし
跡形もなくかき回してしまえ
南天を主役に二粒
財を擲 (なげう) ちこしらえた金型
浅い窪みに転がして
スポイトでも難しい贅沢なジュース、100% のものを

冷凍庫で一晩
砕氷機の刃は役不足
シャーベットになりもしないどっちつかずを
空回りも虚しくエネルギーだけを大気に送る
見とれた指を軽やかに刎ねた
トッピングは寝起きの万華鏡
犬歯とビーズの衝突を重ねて
つまみ食いしきれなかった樹脂のくずを
ピンセットに通して列とつなげる

召し上がれ
いびつな赤でかためられたソース
こめた思念はいつか発動してしまえ
音が逃げ出したフィルムのもどかしさに
魘 (うな) されて朽ちるような夜ならば数え切れないほど
柊のラッピングで枕元に毎晩送り続けるから