嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

雪の華 / 徳永英明 (2006)

なごり雪も去ってしまった今では
君が笑顔を見せるだろう雪がちらつくこともない
それでも君と初めて見た雪は確かに間違いのない日の出来事で
マフラーを巻いた襟元に吹き込む風も
君が隣りにいる暖かさを思えば何も怖くなかった
白は暖かく空を包み完璧な三原色の混じり合いの中で
君の小さな吐息だけが唯一の冬のなごりだった
それは一昨年の思い出か去年の記憶か
ただ君が今ここにいることだけが一つの奇跡として
僕は一人肯くことが出来る
立ち止まった君は不思議そうに空を見上げて
そう、最後の贈り物として春を呼び寄せる
また次の雪にも君が隣りにいますように
そのささやかな祈りを叶える術は僕にはないけれども
天のいたずらがいつの間でも僕たちを包んでくれますように
強く握った掌からこの思いが君に届きますように