俺が俺に取り殺される。マボロシなんかじゃない。見えてる。最期の自分の表情まで見えている。これ以上ない濃縮液を吐き出しても吐き出しても流しこむ。左、紫に浮かぶ管から零れる分泌物で割って自分の身体を循環還元のマシンに仕立て上げる。右、蒼に浮かぶ管はカラメル色で鎮静させる。中指第一関節、犬歯で破る。管の全て、標本を作ろう。環っている仕組みを見てやる。吸い込んで、負けて、ちぎれる。
両足に抱え込んだ頭が、止まずに噴き上げる喜びもない射出を虚ろに映して、濡れて塗り重ねられる。遠くなる鼓動と、見えている矩形の拍がつま先に痺れを作る。脛、骨の形が綺麗だ。酷く綺麗だ。指に飽きた歯が、カルシウム同士で溶けあおうとしている。噛み砕けないもどかしさが、手の指を頭に向かわせる。一本、二本。疼痛にも似た波紋がデルタ秒で反射して、顎に力を与える。
胃が休息を訴えた。俺があらゆる出口から逃げて行く。床がそれを吸いこむ前に、舐め回す舌と、密着した唇で再び取りこんで満たす。内に外が混じって行く。俺が、僕が広がってフィルムが見えなくなる。床に身体が溶ける、まだまだ噴き出している、吐き出している、押し出している世界を、この中に絡めとって、形と混ぜて飛ばす。目が、目が光を知った目が、色を見せてくれない。視覚なのか記憶なのか、色がない、身体は何色で満ちたのだろう。噛み剥がした爪の中から、まだ残っている刺激しか見えない。次の爪の中にも何もない。啜り取れども、噛み砕こうとも、飲みこもうともどこも感じさせてくれない。平面が現れて圧し写される。複製と写生の偽者が作った紙を流しこんでも実がない。残された指が髪を結ぶ。抜いて、結ぶ。針の先にくくり付けた糸が管の中を流れてループ。出ても入りつづける渦。終点のない渦を作る。回って顔が見える。色もないのに顔が見える。
もう一息。