嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

Burning tree / GRAPEVINE (2015)

休日サンセット
煙草の残りを数えてライターを擦る
紫煙、風が流して行く視界
流される心の行方、同時に占う
一曲にも満たない喫煙の時間を散らしては
薄曇りが拡げている西日が差し込む部屋へと

埃の匂いと澱んだ空気
音だけがそれをかき回す
心、同じく澱と上澄みの間を行き来して
光を失っていく部屋の中で、力もまた少しずつ失っていく
言葉を発することのなかった一日の終わりに向け、茫洋と心を漂白
また一週間、無意味の一言で埋めつくされていくだろう心を漂白

幸せな休日
誰にも踏み込ませることのない
物理的空間と心理的空間にもぐり込み
命じるもののないままに一日を潰す
本当に欲しいものはそれか
本当は何かで満たされたいのではないのか
答えのない自問自答
休日ですら無意味の一言、その花弁がひらりと舞い散る

時間の経過に意味を見出す日々を重ねるでもなく
漫然と日々をやり過ごすことに鈍感でいられるほどでもなく
ただ形にならない答えだけが
自作の答案用紙の裏側に書き記されていく
やがて消してしまうだろう文字で

気がつけば日は既に沈み
休日も終わろうとしている
漠とした時間と思考はここまでと打ち切り
現実という時間へと心の舵を切る

ただの茫洋
ただの漫然
ただの休日

そしてまた繰り返すだろう次の休日の心の漂流に向けて
残りわずかになった煙草に火をつけようと
外の空気を吸いに出ていく
それは小さな逃避
何もかもから逃げ出そうとする小さな逃避
繰り返して日々は行く