嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

ANGRY FIST / Hi-STANDARD (1997)

「死ねよ、お前」
独り言が止まらない。

何か、背骨と腕から染み出るようにして汚らしいもの、重いもの、醜いもの、壊したい感情がこの体を包んでいるような気がしてならない。

この攻撃性はなんなんだろう。何かに対する不満だろうか、怒りだろうか。心当たりは次から次へと浮かぶ。違う。そんなに素晴らしいものが相手じゃない。

自分を絶対とする優越感。それがなければ生きていけないんだ。それを見つけるたびに満足して、そして攻撃したくて仕方なくなる。きっかけ一つでいくらでも爆発できるだろう。爆発した結果がどうなろうと構わない。自爆でも構わない。そう思いながらも、すんでのところで避けている。なんて賢い本能なんだろう。なんて嘘くさい攻撃力なんだ。

どうしてそんなにイライラしている自分を作り出す。攻撃の対象なんて本当に大したことがない。自分が絶対であるくせに、そのくせ自分を脅かそうとするものに過剰に反応する。

もう癖になっているんだ。いきがって見せる自分、大きく見せる自分、マイペースであることを演出している自分。どれもこれも脇目走って、ひくついた頬で吠える犬と寸分違わない。口を開いているくせに、尖った犬歯は見えていない。肉に食らいつけないくせに、涎ばかりがとまらない。そのくせ、目は素直に屈服する隙を見せない。常に光らせているから、意味もなく疲れ果てさせている。張ってる肩に入っている力は正しいエネルギーでは動いていない。振り上げてしまったから、仕方なくそのままにしている。自分でもわかっていて、そして周りの誰もが気がついている。本人の恥ずかしさに気がついているから、恥ずかしいとは口に出さないでいる。 「死ねよ、お前」 といつも言われているから、言いたくなる。

どうせ殺すような勇気だってない。それなのに殺せると勘違いしたいから、呪文のように同じ言葉を繰返している。弱いよ。判っているのに、それでも体を包む薄皮を食いやぶることは出来ないんだ。毒々しさが抜けずに、それにヤラれそうになって、目が血走っている。そのうちに自慢の瞳だって誰が見ても臭くて醜い膜に覆われる。そうなるのがいやならその前に死んでしまえ。死んでしまって同じになればいい。楽だぞ、きっと楽だ。

死ぬなら今のうちだろ。死ねよ、お前。