嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

Lifetime / GRAPEVINE (1999)

たとえ虚ろな目をしてみせても
覚えてしまった狸寝入りは隠せない
体が実 (じつ) としてここにあるのは知っている

霞の中に消えていったテールランプのように
次の交差点ではもういなくなっている車のように
本人だけが知っている行き先をキープして
ドライブするのもままならない

プラス α のオーバードライブ
無益な不完全燃焼で浪費する
金もガスも CO2 も
不可欠なもの全てをいたずらに消費した

突風で剥がされた真夜中前の街頭広告も
昼には別の笑顔に変わっている
踊っている紙の縁 (へり) は
はばたこうとしている夢かも知れない
そうやって煙を盾に自嘲 (わら) ったら消された

隙間だらけの抽象の海で泳いでいたはずが
流しこまれた吸水剤で
もがくことも出来なくなった
向かい風の煙草から飛んだ香りだって
「分の1」 にすらなれずに消えた

何も考えずにうまく行っていた 10 代は
ふくらませる為の仕組みを先読みしているうちに
選択肢だらけになった ただ一つの解答と一緒に
硬い言葉の粉と碾 (ひ) かれて消えた

消えただけ固められた今の
寝心地はそう悪くない
おかげさまに増えた 現実の夢を頼って
捨てられたごみ箱が詰まっている

拾うのにも飽きて一杯になるまで
捨て続けた そのうちに燃やす
捨てる喜びも続く
いつか捨てるものもなくなると
不吉に確信しながら眠る

最後に閉じた瞳の奥を 虚ろに開いて笑った