嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

ワンダーフォーゲル / くるり (2000)

数日間、天井の煤を追う病院のベッドで
思いに身体をあずけていた
これまで見えもしなかった人生は
向こうからやって来たり
向かわざるを得なかったり
それらの瞳を見つめて
一通りの真実と事実を口に語り
理解と安心は何も案ずることはなく
笑顔は変わりなく、少しの遠慮もすぐに戻る
気がつくといつかのペースが
またあるべき所から顔を出した
少し力の抜けた身体に血をめぐらそう
時間つぶしに歩き出した変わりのない家並み
バッグから取り出したカメラで
けがをした子どもは、じっとその指をおさえながらも
あれを撮れ、これを撮れとせがむ
親も知らない子どもの世界で
ハローもなくグッバイもなく
どんより曇天の秋、わずかなフレーム
汗をかいた身体と、汗をかいた缶コーヒー
ひと休みしてまた何かを手にしよう
はじまりもなくおわりはいつかまた