「ほら間違っていたでしょう」
彼女は振り向いてそう笑う
何を選んでも間違いなのよと
ためらいの足踏みを見て
今日もまた笑う
手にした冷たい水で顔を冷やそうとしても
水は顔をつたって服へと吸い込まれるだけ
目が覚めるのは一瞬
そしてまた間違っていたでしょうと
言葉のない笑い顔だけが
sinking slowly
ひざまずいた僕はといえば
言葉を組み上げてももう遅いことを知っている
わずか、たたらを踏んだ時間が足枷
せめて頭から注がれる水で
間違っていないと言ってくれる何かを探している
そして憑かれたように
水を飲み続ける
昨日まで吹いていた冷たい風が
湿気を帯びてまとわる夜
だからまたコインを水に換え
間違っていないと言い聞かせる
間違いのきっかけを洗い落とす禊ぎのふりで
水を注ぎ続ける