嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

99 9/9 / TOKYO No.1 SOULSET (1999)

雨だれの速度、何 bps

疎通の CPU が求めた 115200 bps
到底追いつきようのない 2400 bps

カプラーを通した受話器越しの対話。

出口で待ちかまえている耳と脳に戦々恐々としながら、入口であふれさせてしまった僕の不器用。数秒のデータ損失が致命的なコミュニケーションのロスを招いた。一呼吸前の言葉にフォローを許してもくれない、その頭は最新モデル。

渡世の技と自慢するあなた、僕は遁世を選ぶ。

回転数不足の時代遅れは、部品を交換することもままならず、身体ごと交換させられた。ローテーション間隔も知り得ない、主導権なき口約束。引退試合の名言も 2400 bps。伝えきる前に自動回線切断。握りしめた右手だけが順調だった汗の跡で滲ませている。致命的なアンバランスと、先天的なアンバランス。

歌おう語ろう記そう。

次のあなたは何が好みなんだろう。いつまでも 2400 bps。もはや充分なはずのシステムと能力。

脈動は何 bps

変温動物の柔軟性を無視し、端末の向こう側に飼い殺される。学習しない僕が招いたリフレイン。それでも飽きることなく合致しないネゴシエーションで、合致させよう試みよう、無駄な通信履歴。こんなにもアナログな僕の声が、強制的にサンプリングされる次の君も最新式フィルター搭載。