嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

kocorono / bloodthirsty butchers (1996)

見れども遣れども土、土、土、土
鍬振り下ろしゃ石が出る
次も石かと思うて下ろしゃ
ふなり、ここにゃぁ石はなし
三度がぶりと落として残るは
腕がビリリと笑う石
刃欠け鍬見て空も見りゃ
雁が十字に空を撫づ
腰に手をあて向こう見りゃ
ぴょんと鴉がはね歩く
かごに石入れよっこらしょ
足を取られてつんのめり
ごつりごつりと石が打つ
あばら家帰りて飯食うて
欠けっ刃研ぎなし
立て掛け眠る
お天道様が目を覚ましゃ
今朝も颪が戸を揺する
昨夜の鍬持てかご背負ぅて
耕しゃ大石、鋤きゃ小石
石は食えねぇ、漬ける実もなし
手に豆こさえて、食わす豆なし
ないないづくしで土ばかり
石は豊作、食いなせ石を
石を除け除け一息ついて
持てる種蒔きゃ鳥ども笑うてそれを食む
種に芽が出りゃ明くるは泥沼
鳥ども笑うてそれを食む
土を耕せ木の根を起こせ
根っこ掘り出しゃ飯の種
ぼろの刃こさえて今日も空見りゃ
かぎざお作りて雁が行く
振り返りて見りゃ土は土
どこまで行けども土は土