私の中の母は
全てという言葉を知っていて
私の中の母は
いつでも「おやすみなさいな」と
毛布を一枚手にして座る
問いかけても答えない
ただいつも
噴き出してくる棘を抜き取るために
それを手渡してくれるだけ
この顔を埋める胸が欲しいのに
「あとはあなただけなのよ」と
微笑む
空気に侵された氷のよう
溶けると粒の一つが
別れではないさよならを呟く
口元の笑みは通り透けてしまい
手を伸ばしても
布が私を囲っている
それは安らぎの拘束で
また一つあの時の褪せたおまじないで私を鎮めて
それでも動けない
涙がつたい目を覚ました
床に横たわる身体が残り
声の流れ込む耳は私のものなのに
鼓動は耳を押さえないと聞こえない
閉じこめてもう一度目を閉じて
消えていない
ねぇ、そこに座っている
あなただけは私の中で息をしていて