嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

ハイファイ新書 / 相対性理論 (2009)

ぼくはたばこをすってときどきくうきをすう
ぼくはきょうのおさけをのみほしてつぎのおさけにてをだす
ぼくはまいにちむずかしいことをかんがえて
けっきょくなにもしないでぷかぷかとそうこのすみにうかんでいる
たまにがすがなくなってじめんのいしをかぞえている
あまいかたちのいしがぼくにといかける
「わたしといっしょにころがってみませんか」
いやだよそんなの
ころがったらほかのいしとぶつかっちゃう
ちいさなすながどんどんこぼれちゃう
けずれちゃったぼくはきみにわらわれるかもしれない
ほかのいしにもこえをかけられなくなってしまうかもしれない
そんなのこわいよぼくじゃなくなっちゃう
ぼくはだまってかみをぐちゃぐちゃにまるめてすてちゃいたいよ
きみのことばといっしょにわすれちゃいたいよ
ぼくのかたちをきみはしっているけれども
ぼくはぼくのかたちをしらないんだ
いちにのさんしできみがとったぼくのしゃしんは
みたくもないぼくのかおだったよどうしよう
すなみたいにくずれてみんなにわらわれちゃうんだ
おさけがぼくをくっつけてもとにもどしてくれるから
きょうもそっとだまってしずかにおさけをのむんだ
だれにもばれないようにね
ころがってかどがまるくなったぼくは
きっときみにわらわれちゃうし
きっとだれにもきづかれなくなっちゃう
ぼくのいしはぼくのために
きみのいしがくずれてもぼくはおぼえているよ
ぼくのいしがくずれたらだれがおぼえていてくれるかな
ぽろぽろくずれたこいしもぼくなのにね
ぼくがどんどんちいさくなっちゃうよ
ぷかぷかうかぶくらいにちいさくなっちゃうよ
きみはみていてくれるかな
どんどんちいさくなっていくぼくのいしとすなを
すなになったらしずかにきょうのいきをすう
すなになったからだれにもきづかれずにきょうのいきをすう