嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

GET YOURSELF ARRESTED / SHAKKAZOMBIE & northern bright (2000)

常に持ち続けていたもの。頑張れという言葉に対する違和感、反発。誰もが誰に対してでも気軽に口に出せる言葉、出している言葉。そして誰かにとっては喉を締め潰される言葉。死の宣告にも等しい力を持った言葉。

ゴミ屑の山を乗り越えても乗り越えても、得体の知れない神様という輩が試練というゴミ屑を自分の目の前に積み上げていく。踏んづけても踏んづけても、潰して消したと思った瞬間にはまた目の前に山はうず高く。

自分が弱れば弱るほど、人はそこに頑張れのゴミ屑を投げつけ、時に致命傷を負わせる。投げつけられた本人のみぞ知る死因。誰かによる過失致死傷。

何年、いや、もう十数年は持ち続けただろうこの違和感を「適度に頑張ろうか」「死なない程度に頑張ろうか」と言い換え、そしてゴミを踏みつけるでもなく、ただ山を除けながらの回り道、骨折りの旅を続けてしまった。

降ってくるゴミ屑にばかり気を取られ、何度も何度も降り注がれていたはずのその言葉に気づけずにいた。「頑張れ」の一言よりもはるかに頑張れるその一言に。

負けるな。

自分へと言葉がダイレクトに入ってくる人からしか受け取れないその一言。一言に重みがある心からしか受け入れることのできないその一言。

負けるな。

そうだ。こんな安直に、こんなにいい加減に殺されてたまるか。こんなことで負けてたまるか。こんなところで負けてたまるか。

ゴミ屑の山を踏んづけきれないなら、かき分けてでも進み続けろ。そのための体力作りを惜しむな。かき分けながら力を養え。揉まれ潰され窒息しそうになっても、かき分けるその腕の動きを止めるな。かき分けてもかき分けてもそこはゴミ屑の山。いつまで続くかも知れないゴミ屑の山。それでもかき分けている限りは汗をかき続ける。不快なはずの汗が、自分の肌を洗い流していく。

正面ばかりに気を取られ、頭上に開けている空にはまだまだ気づけずにいる。いや、まだ早い。気づき、そしてそこへ行こうとするにはまだ時間が足りない。早過ぎる。

かき分けて進む自分のすぐ隣の山向こう、自分へと与えられた言葉と同じ力に突き動かされてゴミ屑をかき分けている人がいる。いつかは出逢うかもしれない。一度も出逢わないかもしれない。でも必ずそこにいる。

負けるな。

真っ直ぐに前へと掘り進め。かき分けて進め。進んでいる限り、その道は限りなく直線に近い。不用意な頑張れを投げつけられたならば、ゴミ屑の山を盾にして一瞬だけ身をかわせ。ただ一言、その言葉を力に変えてかき分け続けろ。

だから黙って負けてんじゃねぇよ、そんなことで。そんなところで。