嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS / MANIC STREET PREACHERS (1998)

そこに厳かさが宿った。訓えは重みの束縛を解き、余白を主と名指した。それは中心にあった。今、波立っていた心は、周囲から静かに鎮められていく。静かなるものを鎮めることにさほどの意味はなく、隆起へと降り注ぐことによって覆い収まってゆくエネルギーの交換にこそ宿る。時が去く様と、熱気と冷気が互いに息吹を交わしながら中庸を探る様は姿を似せ、定まることのない、不可視かつ流動的な力がさしのべる深い呼吸に目を閉じる。

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美しい、と言葉を配することは難しい。視覚的な映像美を美しいとすることは容易い。フレア、ハレーション。エフェクトには、添え物とした客人へのもてなしを。美しさの最たるものは、自らの虹彩の処理を超え、少しの色を記憶として残しただけの光が、視界を占めたことの狼狽にある。狼狽は不意なる心の乱れであり、反作用に色とする光を取り戻さんと向かう安心は、心を鎮めようと図る行為の源である。美なるものを編み拡げようとする世界の中心には、まず全ての中心である自らが座する。自らがあり、光と存在を認識し、世界を見出す。そして世界は厳粛にはほど遠く、乱される波動に常にさらされ、そして自らもそれを発していく。ゆえに世界の中心は自分の他にない。

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隠匿に専念し光を忌み、瞬時の奔流に踊らされる時を捨てる。激流の縁に足を踏み入れる愚行を避けたならば、万能の存在足らん時だけが解決を導き、残る水路の淵には、自らと世界と背景を満たす光のみを映す鏡が生まれている。