嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

AZURE / 天野清継 (1991)

弦をはじく。短く、また柔らかく。そして集まる。弦の作り出す世界に引き寄せられ、そして調和しながら、また新しい世界を組み上げて行く。

音を作る楽しみはアンサンブル。自分の音がメインとなり、更に増幅される快感。聞き手は世界を作り出す。支えになるバック、世界をリードするメイン。それは散策し、物語る軟らかなギター。ファンタジー世界の吟遊詩人は圧倒的な主人公。

楽器の駆け引きは世界に動を与え、目に見える弦の振幅は蜜を運ぶ羽虫の波。世界は主人公を支えるべくして成り立ち、彼を中心にして動く。集まった者たちの情の中で育つ音。柔和な世界に支えられた主人公、清らな人物が与える世界。

気だるいため息も軽やかに、スキップは地面を痛めつける事なく。心地よい仲間にくるまれた音は、同等の柔らかさフィードバックする。細く踊り、そしていつしか輪になる宴。音符となって目の前に現れる弦を見つめながら世界を作るギター。辺りを、跳ねながら楽しむピアノ。