あの時、君は何が欲しかったのだろうか
ねだっていたものは、何だったのだろうか
それが僕ではないことは知っていた
僕なら連れ出せるだろう
ケージの外の世界を欲しがっていただけの話
だから再び檻に入らなければならない時の悲しそうな顔は
僕と別れることの悲しさではなく
自分が閉じ込められてしまうことへの悲しさだったんだ
それが君が望んでいた世界へと入るための儀式だったとしても
僕という釣り餌を使って何かしらの喜びを見出そうとしていた
本当って何だろう
今ではもう何も分からない
あまりにも時間が経ちすぎて
もう記憶の彼方へとそれは追いやられてしまって
それでもふと思い出させるのは僕の罪?君の罪?
あの日から僕が素直に笑えずにいるのは
君が押しつけた烙印のせい?
嘘だったとは言わない、思わない
だけども僕の中には真実はなかった
君が見ていたその先は僕の顔のまた向こうに広がる世界
僕を素通りして見ていた世界
僕では叶えられなかった世界
今では僕が僕を叶えられずにいる
君が欲しかったものを欲しているのはこの僕、当の本人
あの日々はやはり烙印なのだと今なら思える
焼き付けられたそれをぼんやりと眺めては
僕の世界はどこにあるのだろうと考えている
僕はかつての君の視線を通して
まだ探し続けている
その終着点はどこにあるのだろうかなどと曖昧に考えながら