嫁聴け(1998-2016)

音を触媒にした連鎖と波形を、言葉を道具に焼いたもの

Cafe Bohemia / 佐野元春 (1986)

青春と呼ばれる青い炎もいつの日か消えてしまう
やるせのない平日に車を走らせては
繰り返しの風景にすっかり飽きてしまっていた
かき鳴らしたロックンロールのギターも
知識と誹謗でいつの間にか手にすることもなくなっていた
スポットライトは誰のため
スポットライトは僕のため
いつかその光でさえも
自分ではない誰かのために分け与えられてしまう

人はそれを成長と呼ぶか?
かつて人だった者たちはそれを喪失と呼ぶか?
若くたぎっていた血でさえも今や体温に支配されてしまっている
あったことが疑わしい刃(やいぱ)でさえ
今は夢物語と成り下がっている
首に巻き付けたタイは帯刀ではなく
かつてを忘れた自分に与えられた瑕となっている
あの呪文はいずこ
最早どこにも残されてはいない頭への証を探し求める情熱もなく
今はただ忘れ物の存在さえも忘れてしまい
骸のように日々の衰弱を夢見ている

あの時の自分の誤解を解きほぐすのであれば
もうすでに解放されているというのであれば
いつになったらあの音は鳴り止むのだろう
響きを続けるエバーグリーンは
いつになったら僕を解放してくれるというのか
僕の歳は今もまだ進んでいるのだろうか
答えが、答えが欲しい
100mダッシュの直線に愛される自分を夢見るのは罪か
まだ走り続ける余裕は残されているか